税法解釈の基本3ステップ

「税法解釈に当たっては、
#一般的な税務事例と具体的な個別事例にまず区分することが重要なんだけど、それを区分したら、次に考えないといけないのは
事実の確認、法令の発見、法令の適用の3ステップね。今回は、それぞれについて簡単に説明することにしましょう」

「この3ステップは、税法だけなんですか?」

「そんなことはないわ。
法令一般に共通する解釈の基本よ。会社法でも民法でも刑法でも、基本は同じね。ただ、このブログでは、事実の確定、法令の発見、法令の適用と呼んでいるけど、市販の解説書などでは、少し呼び方が異なるものもあったりするから注意してね」

「わかりました」

「それから、このブログでは
税法解釈を行うことを念頭において話しているから、法令の発見と適用は、
法人税法などの税法をイメージしてね」

「はい」

「それぞれ詳しくみてみましょう」
(1)事実の確定

「まずは、
事実の確定ね。これは、これから税法を適用しようとしている対象をハッキリさせることね」

「これは、
具体的な個別事例ではとても重要なんですよね」

「そうね。これを誤ると、どんな答えが出ても誤りになってしまうのよね。事実の確定をもう少し別の言葉で言い換えると、いわゆる5W1H(
Who、What、When、Where、Why、How)にもう1つH(
How much)を加えた
5W2Hをハッキリさせることよ」

「確かに、文章を書くときと違って、「
How much(いくら)」というのは税法では必須ですね。ところで、どうしてこの図では、「
Why(なぜ)」だけ色を分けて強調しているんですか?」

「気づいてもらえてよかったわ。5W2Hのどの要素が重要になるかは、個別事例ごとに異なるんだけど、どの場合であっても、絶対に曖昧(あいまい)にしてはいけないのは、「
Why(なぜ)」なのね」

「昔からヨツバ先生に『
税金を安くする理由のみでスキームを考えてはいけない』とよく言われていたんだけど、税法を良く知っている人ほど、ただ税金を安くするためだけに節税スキームを組んで失敗することがあるの」

「どうしてですか?」

「
租税回避行為として否認されたりするリスクがあるのね」

「でも、税金を安くしたいのは、人間として普通の行為ですよね」

「そうね。だから、ヨツバ先生も『
他にちゃんと経営上・事業上の理由があって、結果的に税金が減ることについて文句はいえない』と言っていたわね」

「つまり、モミジさんが「
Why(なぜ)」を強調しているのは、
単に税金を安くする理由だけになっていないかのチェックということですね」

「それもあるんだけど、私はヨツバ先生の考え方をもう少し進めて、
変な節税をすることによって、経営や事業そのものを歪めることがあってはならない、とも考えているの。だから、税法解釈以前の話として、なぜそんなことをするのか
、それは本当に個人や会社のためになるのかを税理士として考えてほしいからなのよ」

「なるほど。それは確かに重要なポイントですね」

「ちなみに、事実の確定は、あとの法令の発見や適用をするときに適宜確定すべき事実を増やしていけばいいから、
最初から完璧にする必要はないわよ。ただ、
常に事実を確定しようとすることを忘れず、アンテナを張っておくことね。1つの事実が未確定なことによって、最終的な判断がひっくり返ることなんて十分起こりうるんだから」
(2)法令の発見

「次に行うのが、
法令の発見ね」

「これは当たり前といえば当たり前ですね。
#税法の法体系をイメージして関連する法令や通達を漏れなく探せばいいんですよね」

「そうね。
#質疑応答事例や文書回答事例も忘れたらダメよ。最初はなかなかどれが必要かわからないことも多いから、書籍やインターネットのサイトを使って、できる限り関係する法令などをピックアップすることが大事ね」

「サイトとかも使っていいんですか」

「当たり前よ。条文番号まで載せているものはなかなかないかもしれないけど、いろんな意見があるから、必ず一度はキーワードをいろいろ変えて調べておきたいわね。ときどき書籍以上の掘り出し物が見つかるときもあるし」

「それから、法人税の場合には
会社法や企業会計を、相続税の場合には
民法も必要に応じてピックアップしないといけないときもあるから、税法だけにとらわれないようにしたいものね」

「なるほど、法人税だと会計処理(仕訳)をどうしたかも重要なときがありますもんね」

「あとは・・・そうそう、判例や
#裁決もこの段階で見つけておきたいわね。関連する条文も載っているし」
(3)法令の適用

「事実の確認と法令の発見ができたら、いよいよ
法令の適用ね」

「料理で言えば、事実の確定は「
材料」、法令の発見は「
レシピ」かしら。法令の適用は「
調理」ね」

「じゃあ、同じ材料で同じレシピがあれば、みんな同じ料理が作れるってことですね」

「ところがそうじゃないのが税法解釈の面白いところよ。素人とプロの料理人が作る料理が全然違うように、「法令の適用」も
人によって相当差が生ずるのね」

「そういうものなんですか・・・」

「そうよ。事実の確定と法令の発見は、誰でも同じところにたどり着くというか、たどり着かないと困るんだけど、法令の適用では、必ずしも誰もが同じところへたどり着くとは限らないのね」

「その理由は、料理と同じで、法令の適用には、
いろいろな技術や経験が必要だからなのね」

「技術や経験?」

「技術は、書籍を読んだりすればある程度はわかるんだけど、料理と同じで、
その技術をどうやって使ったらいいかということは、書籍だけではかなり限界があるのね。
いろいろな経験をしていく中で気づいていくものだから、ワカバくんにはそういうところも含めて教えていくわね」

「お願いします」

「といっても、「法令の適用」は今回だけではとてもじゃないけど説明できないから、また別の記事でね」
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