2008年05月08日

なぜ法律の施行日が4月30日か(3)

 この記事を読む前に、以下の記事を先にお読みください。

なぜ法律の施行日が4月30日か(1)
なぜ法律の施行日が4月30日か(2)


平成20年度改正の場合

 そして、このややこしい施行日と施行期日と適用時期の関係がさらにややこしくなったたのが、平成20年度改正だったということです。

 4月30日に成立・可決された改正法は、3月に提出した改正法律案を修正していません。

 その代わりに、「所得税法等の一部を改正する法律附則第119条の2の規定による経過措置を定める政令」を出すことによって、4月30日に成立した場合の問題点を、すべて経過措置と読替えによって回避しようとしたのです。

 このような手段をとったのは、「その方が簡単だから」という理由ではないかと考えられます。

 修正しなければならなかったのは、個々の規定ではなく、「適用期日(適用時期)」だったからです。


 また、不利益不遡及となるもの以外は、基本的には、納税義務の成立時期の考え方納税義務者の利益となるという観点から、平成20年4月1日に施行しても問題とならないことから、部分的な改正が成り立ちます。


 さらに、改正法案をすべて変えて内閣法制局を通すよりも、「所得税法等の一部を改正する法律附則第119条の2の規定による経過措置を定める政令」を通す方が、容易だったのかなとも推測できます。もちろん、すべてチェックすることになると考えられますが、ミスを防ぐ観点からすれば、今回の方法が優れているように考えられます。読む方にはたまったものではありませんが・・・(『改正税法のすべて』に期待)。


 その結果、平成20年度改正法は、例年と異なり、次のようになっています。

施行日
 平成20年4月30日(改正法附則3条の読み替え)
施行期日
 平成20年4月1日(改正法附則1条本文)
 上記以外の日(改正法附則1条ただし書)
適用期日
 平成20年4月1日(原則は施行期日と同じ日)
 上記以外の日(改正法附則2条以降の経過措置がある場合)

 例年は、「施行日」=「施行期日の原則の日」=「適用期日の原則の日」=「平成○年4月1日」だったのですが、今年は、

「施行日」≠「施行期日の原則の日」=「適用期日の原則の日」

 となっているのです。


施行期日や適用期日の後に施行日があるのは誤り?

 しかし、どこか腑に落ちないことと思います。「施行日」が「施行期日」や「適用期日」より後にあるけど、いいのか、という疑問ですね。

 先ほどのネット通販店に再度登場してもらいましょう。

 4月1日に「高性能リ○ックマ」と「高性能コリ○ックマ」を販売しようとしていた直前の3月30日に、なんと販売用のシステムがダウンして、1ヶ月間、修理が必要ということがわかりました。

お詫び
 4月1日に販売を予定していた「高性能リ○ックマ」と「高性能コリ○ックマ」は、当社の販売用システムのダウンにより、注文の受付けが困難な状況となっています。復旧次第、ご注文をお受けしますので、しばらくお待ちください。

 そして、4月30日にようやく販売用システムが回復し、同日から注文を受付け、発送を開始しました。

お知らせ
 4月1日に販売を予定していた「高性能リ○ックマ」と「高性能コリ○ックマ」は、当社の販売用システムの復旧により、本日4月30日から注文を受付けております

 当初のチラシでは「4月1日」販売開始としていましたが、実際にネット上で告知(=「公布」に相当)が行われ、販売が開始されたのは、「4月30日」ということですね。

(実際のネット上の)販売日」・・・4月30日
 ネット上で受付が開始されたのは、この日です。
(当初の)販売日」・・・4月1日
 ネット上で販売はされていませんでしたが、「商品」はこの日からこの世に存在しています。

 そうすると、「高性能コリ○ックマ」を手に入れることができたのは4月30日以降じゃないのか、ということになりますが、実は、ホームページを見て、電話注文した人もいて、そういう人には、4月1日から売っていました。

実際に買える日」・・・4月1日

 他に良い例が見つからなからなかったので、こんな説明になってしまいましたが、要するに、「適用期日」が4月1日になるようにしていれば、適用できるということですね。


最後に、改正法令や改正省令は・・・

 平成20年度改正は、施行日が施行期日よりも遅いというあまり例のない改正となりましたが、改正法附則1条が「平成20年4月1日から施行する」といっているのは、誤りではない(ようにいろいろ工夫をしている)ということになります。

 ちなみに、改正法令と改正省令は、すべて読替え後の状態となっていますので、改正法のような読み替えはありません。読み比べていただきますと、一目瞭然です。

改正法令附則10条(耐用年数の短縮に関する経過措置)
 新令第57条第7項(耐用年数の短縮)の規定は、法人が平成20年4月1日以後に終了する事業年度において同項に規定する更新資産の取得をした場合について適用する。

 例年なら、黄色いマーカーの部分は「施行日以後に終了する事業年度」ですが、改正法令3条で施行日を「施行の日=公布日(4月30日)」と定義しているため、それをやってしまうと大変なことになります。

 そこで、「適用期日」を改正法令附則2条以降で加工しているため、そんな芸当ができるようになっています。


 ただし、施行期日の原則を改正法令附則1条で公布の日としているので、改正法令自体は、最速でも4月30日にこの世に存在していないということになりますが、適用期日を4月1日などに変えてしまえば、適用されてしまいます。

 それが問題になったのが、例の↓です。

平成16年改正法附則27条1項
 (個人の譲渡所得の課税の特例に関する経過措置)

 新租税特別措置法第三十一条の規定は、個人が平成十六年一月一日以後に行う同上第一項に規定する土地等又は建物等の譲渡について適用し、個人が同日前に行った旧租税特別措置法第三十一条第一項に規定する土地等又は建物等の譲渡については、なお従前の例による。

 法令が存在していないのに、適用するときには、問題が生ずる余地があるということです。

 「高性能コリ○ックマ」のたとえ話では、「商品が手許になくても、商品を発送できる」ため、改正法令や改正省令の方がむしろ説明できません。改正法よりも改正法令や改正省令の方が異常ということなのですが、この記事ではこれ以上突っ込まないこととします。
 

 それにしても、「高性能コリ○ックマ」って一体どんな機能がついてるんだろう・・・。


 この記事は、調べ物のお役に立てましたでしょうか。
今後ともよろしくお願いします!



(注)注意事項
 当ブログは見ていただく方に有益な情報の提供を目的としております。しかし提供する情報はその全てにおいてその正確性を保証するものではありません。
 また、関連法令は更新日の日付の時点のものを掲載しています。


双葉更新履歴
 [2008/05/08 初投稿]



トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔