2008年02月14日

附則:経過措置の別段の定め

Q. 「経過措置の別段の定め」とは何ですか?

A. 「いつから」・「どういう場合に」を個別に定めたものです。


「いつから」・「どういう場合に」が書かれている

 さて、法人税法に関する経過措置の原則である附則9条には、最初に次のように書かれています。

附則9条(法人税法の一部改正に伴う経過措置の原則)
 この附則に別段の定めがあるものを除き、(以下省略)

 つまり、経過措置の原則に対して、経過措置の別段の定めが存在することになります。

 たとえば、「施行日(4月1日)から適用する」や「施行日(4月1日)以後に終了する事業年度から適用する」などと、「いつから」について別段の定めがあるときには、附則9条の「施行日(4月1日)以後開始する事業年度から適用する」という文言は、無効になってしまいます。

 また、「いつから」のほかに、経過措置の別段の定めには、「どういう場合に」ということが書かれることもあります。

 附則10条から解説したいところですが、具体例としては複雑すぎますので、附則16条に登場してもらいましょう。

附則16条(貸倒引当金に関する経過措置)
 新法人税法第五十二条第十一項の規定は、施行日後に同項に規定する特定普通法人が公益法人等に該当することとなる場合について適用する。

 「施行日(4月1日)後(いつから)」かつ同項に規定する特定普通法人が公益法人等に該当することとなる場合に(どういう場合に)」適用されることとなります。

 事業年度の話は何も出てきませんので、何月決算法人であっても、施行日(4月1日)後にこの場合に該当すれば、新法人税法52条11項の規定が適用されます。

 ところで、附則16条で本当に注意が必要なのは、「施行日以後」ではなく、「施行日」としている点です。平成20年4月2日からの適用と読めます。つまり4月1日(施行日)にこういう場合になっても附則16条は適用されないということがわかります。

4月1日後 :4月1日を含まない
4月1日以後:4月1日を含む


終了事業年度ベースは遡(さかのぼ)って適用される

 「施行日以後」であったり、「施行日以後に開始する事業年度」であれば、未来の話なのでいいのですが、「施行日以後に終了する事業年度」となると、話が変わります。このような場合には、税制改正の影響が過去にさかのぼってしまうので、注意が必要です。

 今回の改正案の中では、附則21条にそのような規定があります。

附則21条(各事業年度の所得に対する法人税の税率に関する経過措置)
 新法人税法第六十六条の規定は、法人の附則第一条第五号に定める日以後に終了する事業年度の所得に対する法人税について適用し、法人の同日前に終了した事業年度の所得に対する法人税については、なお従前の例による。

 ここで「附則第一条第五号に定める日」というのは、「平成20年12月1日」のことです。

附則1条(施行期日)
一〜四 省略
五 次に掲げる規定 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)の施行の日(平成二十年十二月一日

 なお、「施行日以後終了する事業年度の所得に対する法人税」ではなく、わざわざ「附則第一条第五号に定める日以後に終了する事業年度に対する法人税」と書いている点にも注意が必要です。


 そうしますと、「平成20年12月1日以後に終了する事業年度の所得に対する法人税」について、「新法人税法第六十六条の規定」が適用されることになります。

 さかのぼったときに納税者が得をすればいいのですが、「新法人税法第六十六条の規定」は、誰かに対して税率が不利に働く規定です。

 平成20年12月1日以後に終了する事業年度に適用されるということは、12月31日に終わる12月決算法人が、この規定の適用を受けることになってしまった場合には、平成20年1〜3月(まさに今ですが)の所得に対する法人税の税率は、どのような取り扱いになるのでしょうか。

 なお、法人税は、納税義務が事業年度の終了時に確定するため、後述の所得税の例とは異なり、遡及課税とまではいえません(注:東京地裁の合憲判決では、所得税についても同様に、納税義務が年末に確定することから、遡及課税ではないとしています)。


 *関連記事*

附則:附則は「施行期日」と「経過措置」でできている
http://taxotak.livedoor.biz/archives/50595888.html
附則:経過措置の原則
http://taxotak.livedoor.biz/archives/50596887.html



平成16年と17年では大違い

 参考までに、平成16年度改正における租税特別措置法31条の経過措置を見てみます。「いつから」、「どのような場合か」について、次のような別段の定めが置かれていました。

平成16年改正法附則27条1項
 (個人の譲渡所得の課税の特例に関する経過措置)

 新租税特別措置法第三十一条の規定は、個人が平成十六年一月一日以後に行う同上第一項に規定する土地等又は建物等の譲渡について適用し、個人が同日前に行った旧租税特別措置法第三十一条第一項に規定する土地等又は建物等の譲渡については、なお従前の例による。

 「平成十六年」か「平成十七年」かで、雲泥の差があるということが、よくわかります。次の日弁連が平成16年9月に出した意見書も、「遡及立法は租税法律主義に違反する」など、興味深いことが書かれています。

 *参考*
土地建物等の譲渡損益通算禁止についての意見書:日弁連[PDF]

 *関連記事*
税法の遡及適用(後出しジャンケン)
http://taxotak.livedoor.biz/archives/50593658.html



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双葉更新履歴
 [2008/02/12 初投稿]
 [2008/02/14 一部訂正]



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