2008年02月18日
「その他政令で定める」と「その他の政令で定める」
「その他」も「その他の」も同じことを表しますか?
違うものを表すのでご注意下さい。
「その他」と「その他の」の違い
法令用語の基礎ですが、改めて具体例で確認をしてみます。
りんご、ももその他バラ科の果物
「その他」の場合は、この文章を読んだだけで、りんご・ももは、無条件で対象になることがわかります。
そして、これらとその他バラ科の果物の間には、並列の関係があります。
りんご、ももその他のバラ科の果物
これに対して、「その他の」の場合は、後者が前者を包み込む内包関係にあります。りんごやももは、単なるバラ科の果物の例示なのですね。大切なのは、「バラ科の果物」の部分です。
りんごやももは例示なので、無条件で対象になるかどうかはわかりません。
この例文ですと、両者の違いというのがわかりづらいかと思いますが、それぞれのポイントをまとめると、次のようになります。
「その他」 :(1)前者は全て対象、(2)並列の関係
「その他の」:(1)前者は例示、(2)内包関係
ところが、「その他政令で定める」と「その他の政令で定める」となると、この考え方の違いが非常に重要になります。
「その他政令で定める」と「その他の政令で定める」の違い
まず、「法律」と「政令」の関係をおさらいしましょう。
会社の上下関係でたとえると、「課長(法律)」が「係長(政令)」に、「大枠はこう決めとくから、細かいことは頼んだよ」と一部権限を任せるようなものです。
そこで、以下では、課長と係長に登場してもらいましょう。
課長と係長は、新製品のジュースを考えていました。
課長は、次のように言いました。
りんご、ももは絶対入れよう。
あとは係長が他に入れる果物を決めといてくれ。
これを、法律で書くとこうなります。
りんご、ももその他政令で定める果物
「その他」のルールは、(1)前者は全て対象、(2)並列の関係でした。
このルールに従うのであれば、りんごとももは確定ということになります。そして、その他政令で定める果物には、りんごやももに近いものが対象となるはずです。
そこで、係長は悩んだ結果、こうしました。
では、なしを入れましょう。
これを、政令で書くと、こうなります。
政令で定める果物は、なしとする。
課長がすでに「りんごともも」を入れることを決めてしまったので、係長が「りんごともも」について言う必要はありません。したがって、政令の中には、りんごとももが書かれることはありません。
では、「その他の」になったらどうなるのでしょうか。
課長は、次のように言いました。
りんごとかももとか、なんか、そういう果物がいいよね。
適当に決めといて。
先程と「りんごともも」に対するトーンが違うことに気づかれると思います。
これを法律に書くと、次のようになります。
りんご、ももその他の政令で定める果物
「その他の」のルールに従うのであれば、りんごやももは、単なる例示です。「その他」のときのように、絶対に入れなければならないという勢いは感じられません。
したがって、これだけをみると、本当に「りんごやもも」が全て対象となるのかが、課長の発言ではわからないのです。
ジュースに何を入れるかは、係長が実質的に決めることになりました。
りんごとかももはありきたりでしょう。
なしでいきましょう。
これを政令で書くとこうなります。
○○法第1項に規定するその他の政令で定める果物とは、なしとする
つまり、政令を見てはじめて、対象が明らかになります。
「その他の」の場合には、「りんごともも」を対象にするためには、改めて政令の中に書かなければなりません。今回のように、りんごとももを書かないと、りんごとももを法律で書いていたとしても、政令では「なし」としか言ってないことから、対象外になってしまうのです。
課長は「りんごやもものような果物」とは言いましたが、別に「りんごやもも」を入れるように指示していないという点に注意が必要なのです。
もちろん、法律でりんごやももを例に出しておいて、政令ではりんごとももが全く出てこないのでは、話が違うんじゃないのか、と疑いたくもなります。さすがに、実際の法律と政令ではそこまでひどいものはありません。
したがって、次のようになることの方が多いような気がします。
りんごとかももですか…。
それだと品種がわからないので、りんごはジョナゴールドに、
ももは白桃にしましょう。
これを政令で書くとこうなります。
○○法第1項に規定するそのその他の政令で定める果物とは、ジョナゴールドと白桃とする
つまり、政令を見ると、どうやら、すべてのりんごやももが対象にならないようですね。
税制改正は法律が先に来る
最近の税制改正の法律案を読んでいると、「〜その他政令で定めるもの」や「〜その他の政令で定めるもの」といった風に、「政令で定めるもの」が多いなぁ、という印象を受けます。
そのときに頭の片隅に置いておきたいのは、次のルールです。
「その他」 :その前にあるものが対象となることが確定している
「その他の」:何が対象になるかは、政令を見るまで油断できない
特に、「〜その他の政令で定めるもの」と書かれているときは、前者(「〜」の部分)に並んでいるものは、政令で範囲が変わる可能性があるのです。
[2008/02/18 初投稿]


