2008年01月31日

税法の遡及適用(後出しジャンケン)

Q. 税法の「遡及適用」とは何ですか?

A. さかのぼって税法の規定を適用するということです。


遡及適用は良い場合も悪い場合もある

 「遡及(そきゅう)」とは、遡(さかのぼ)って何らかの影響を及(およ)ぼすことをいいます。したがって、遡及して適用するということは、さかのぼって法人税法や所得税法などのある規定を適用するという意味になります。

 後出しジャンケンみたいなものですね。


 これが、後出しジャンケンをした相手が負けた場合(こちらに有利な場合)であれば、先に出したこちらとしては、別に文句もありません。

 たとえば、いわゆる事業承継税制は、平成21年度税制改正で明らかとなり、平成20年10月にさかのぼって適用されるようですが、内容としては、納税者にとって利益になることであれば、このような例外的な遡及適用を行うことは、可能なのかもしれません。


 しかしながら、後出しジャンケンをした相手が勝った場合(こちらに不利な場合)には、「ちょっと待った、今のおかしいでしょ!」と言いたくなります。

 納税者が、「え? そんなのそのときなかったよね」と言っても、「残念ですが、法律には、1月1日にさかのぼって適用されると書いてありますので…」と言われて、不利な取扱いを受ける場合があります。

 典型的なのが、平成16年度改正以来、問題となっている土地建物の譲渡損益の損益通算の廃止ですね。

 *おすすめ解説記事*
投資経済データリンク
税法の遡及適用という暴挙 4月に決まった法律で1月から税金を取った政府・官僚

 日本国憲法では、罪刑法定主義(31条)と租税法律主義(84条)を定めていますが、訴求適用について定めれているのは前者のみ(「遡及処罰の禁止」:39条)ですので、租税においても、租税法律主義の一部だ、というよりも、「遡及課税の禁止」をそもそも憲法に盛り込んでほしいものです(もちろん利益になる遡及はできるようにしつつ)。

『租税法(12版)』金子宏p.99
 憲法は、この点について明文の定めをおいていないが、憲法84条は納税者の信頼を裏切るような遡及立法を禁止する趣旨を含んでいる、と解すべきである。


 ちなみに、いつから適用するのか、いつまで適用するのか、といった、経過措置については、本文ではなく、附則の部分に書かれています。

 *関連記事*
本則(総則、実体規定、雑則、罰則)と附則
http://taxotak.livedoor.biz/archives/50216893.html


1番の問題は、「周知期間」がないこと

 さて、どうして不利益な後出しジャンケンが起こってしまったのかといえば、現在の税制改正のプロセスが、とても異常な状態にあるからだと考えられます。それはこのブログでも、いろいろな記事でお伝えしたとおりです。

 *関連記事*
なぜ租税特別措置法はこんなに量が多いのですか?
http://taxotak.livedoor.biz/archives/50529775.html
自民党税制調査会(与党税制調査会)
http://taxotak.livedoor.biz/archives/50484994.html


 この異常さは、会社法や会計基準を比較すれば、すぐにわかります。いずれも、適用される1年以上前に、新しい制度の内容を提示して周知期間を置き、パブリックコメント(みんなの意見)を求めたりしています。


 周知期間がないということは、ある日、学校から帰ってきたら、突然、大切にしていたオモチャを片付けないのを理由に燃えないゴミに出されたようなものです。

「なんで捨てる前に、何も言ってくれなかったの!」
「あらだって、片付けてないのが悪いのよ」

 事前に周知期間があって、その内容をきちんと理解させていれば、結果はもう少し変わったかもしれません。

「明日まで片付けないと捨てるわよ」
「はーい。片付けます」

「あれだけ言ったのに! 片付けてないから、約束どおり捨てたわよ」
「うわーん(涙)」

 遡及適用は、立法上、もちろん論外なのですが、それ以上に、それを許してしまう改正のプロセスが異常だということです。特殊支配同族会社の話も、周知期間があれば、途中で消されていたでしょうに…。もちろん、周知期間があればすべてが解決するとは思ってはいませんが、最低限、必要であると考えます。




 法律もそうですが、政省令もパブコメがないのはどうなのでしょうか。今回の法律案も、ほとんど「〜政令で定める〜」として、肝心なところが読みきれません。


 この記事は、調べ物のお役に立てましたでしょうか。
お読みいただきありがとうございます!


 *関連記事*
なぜ法人税法施行令はパブリックコメントがないのですか?
http://taxotak.livedoor.biz/archives/50349419.html

 いずれにしても、不利益不遡及の原則に則り、納税者にやさしい税制改正を行うべきだと思っています。


(注)注意事項
 当ブログは見ていただく方に有益な情報の提供を目的としております。しかし提供する情報はその全てにおいてその正確性を保証するものではありません。
 また、関連法令は更新日の日付の時点のものを掲載しています。


双葉更新履歴
 [2008/01/31 初投稿]



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この記事へのコメント

8. IKE    2008年02月15日 00:29
そうか、身内票だけだったのか…。
マウスオーバーは、また考えてみます。
7. 卯月    2008年02月14日 18:33
ランキングはどっちかというと素通りしがちですが(汗)、
犬のイラストが可愛くてついクリックしてしまう今日この頃。
身内票でいいのか?っていう疑問はありますが

マウスオーバーでイラストが変わったり、クリックすると
話しかけたりしてくれると(ブログペットみたいに?)
クリックしちゃう人が増えたり……しないかなぁ。
6. IKE    2008年02月12日 20:30
ランキング参加しました(>_<)
応援ありがとうございます!

kimutaxさんには遠く及びませんが、
「まにあ」と「オタク」を間違えて
クリックしてくれる人がいるといいなと
思っていたりする今日この頃です(笑)
5.  kimutax    2008年02月11日 16:20
お!ランキング参加ですか!

応援しますO(≧▽≦)O ♪

いちおう、どやさんのもクリックしてるんですよ。。。思い出したころに(笑)
4. IKE    2008年02月04日 22:20
どやさん、応援ありがとうございますm(__)m
どやさんのブログのコメントを増やすべきか
見守るべきか悩む今日この頃です

ランキングは、トップページだけリンクを
貼って、そこはかとなく参加することにしました。
今までどおり、内容重視でがんばりたいと
思います
3. どや    2008年02月04日 22:13
とうとう・・・
人気blogランキングに来ましたか。
(ーー;)

これで、また私のランクが・・・(惨め)
まぁ、みんなの意見?が反映されているわけだから、しゃーないけど。
2. IKE    2008年02月01日 10:06
まったくですね(笑)
まあこの記事もその点については
人任せですが・・・
1. どや    2008年02月01日 09:03
非常に画期的な判決であったと思いますし、
こういった租税法律主義に反する税制が平然と国会を通っていた・・・。

そうしたことを周知していただくために、アクセス数が多く、かつ人気ブロガーである「あの方」が他力本願で済む出来事ではないと思います。
(アクセス数が少なく、かつ不人気ブロガーの他力本願。)

期待しておりますm(__)m

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