2007年11月26日

「税法の立法趣旨」はどこに書いてあるのか

Q. 「税法の立法趣旨」は何を読めば良いですか?

A. 『改正税法のすべて』や政府税調の審議過程などがあります。


立法趣旨とは

 法律の「行間」を読むための1番の近道は、立法趣旨を読むことです。

 立法趣旨は、その規定が創設又は改正された「背景や理由」を教えてくれます。

『税法の読み方 判例の読み方』(著:伊藤義一)10頁
 その立法を必要とした社会経済情勢、立法を提言した税制調査会の審議状況や答申等、法律提案理由、国会における審議状況、外国の立法をモデルにしたものであれば外国の立法趣旨や解釈、その他外部に向かって明らかにされた立法事務当事者の立法趣旨―税法の場合であれば、「改正税法のすべて」―等


改正税法のすべて』の位置づけ

 立法担当者である財務省主税局の職員が書いている『改正税法のすべて』(毎年7月刊行)は、立法趣旨を知るための基本中の基本です。もっとも詳細に税法の立法趣旨が解説されている文献といえます。

 ただし、改正される条文のすべてについて、立法趣旨が解説されるわけではありません。ときどき、わざと書いていないのではないかと思われる改正項目も散見されます。

 また、たとえ書いてあったとしても、実際にはそのような条文の書き方になっていなかったり、他の規定と矛盾する場合もあるので、鵜呑みにするのではなく、批判的に読む姿勢が求められます。

 *関連記事*
『改正税法のすべて』
http://taxotak.livedoor.biz/archives/50363651.html


「通達」の位置づけ

 通達は、立法趣旨ではなくて「解釈」の1つだろうと思われるかもしれません。しかし税制改正の過程で、国税庁に立法趣旨を説明し、確認をとることや、国税庁の公式見解である通達にも、その意図が反映される可能性が高いことから、通達を立法趣旨の表れとしてみることも可能です。

 通達は、法律ではありませんから、法律や政令に書いてあること以上に、納税者に不利になる事項を書くのは、租税法律主義に反することとなりますが、法令をつくる過程で書ききれなかったことや抽象的な表現にとどまっていたものを、あとで通達に書くこともありえます。そういう意味では、立法趣旨というよりも、何を狙い打ちにしたかったのかを知るために活用できます。

 『法人税基本通達逐条解説』『所得税基本通達逐条解説』などの逐条解説は、なぜそのような通達があるのかを、非常に丁寧に解説してくれるので、実務を行う上では重要です。

 また、法人税の基本通達は、改正の趣旨をホームページ上で公表しています。

平成19年3月13日付課法2−3ほか1課共同
「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明


「Q&A」の位置づけ

 国税庁は、法人税について、よくある質問をまとめ、Q&Aを出しています。近年、「交際費等(飲食費)に関するQ&A」をはじめとして、「役員給与に関するQ&A」、「法人の減価償却制度の改正に関するQ&A」といった重要改正に関する回答集が、改正内容を周知するために出されています。

法人税:その他法令解釈に関する情報

 むろん、Q&Aは法律ではありませんので、Q&Aが本当に立法趣旨に合っているのか、文理解釈上、本当に問題がないのかなど、これについても鵜呑みにせずに検討することが重要ですが、実務上は通達よりもこちらの方が使い勝手は良いかもしれません。


『図解 法人税』など図解シリーズの位置づけ

 さて、財務省主税局、国税庁ときたら、次は国税局ですね。

 図解シリーズは、国税局職員が書いた税法のガイドブックです。その内容は、各規定の全体像や、法律と施行令・施行規則・通達との関連性をわかりやすく説明しています。

 この図解シリーズも、立法趣旨とどのような関係あるのか、と疑問に思われるかもしれません。丁寧に条文を分解していますが、その図解しただけで、そのまんまともいえます。

 ところが、よくみていると、注書き誤りやすいポイントなどの中で、とても重要なことを言っていたりします(ただし、記述量が少ないため、ヒントにはなりますが、物足りなさも感じます)。

 そこで、「初めて読む規定」を確認するため、条文にあたるときは、かたわらに図解シリーズを置いて、ふつうに読んでいたらわからないところもしっかりと吸収するのが良いのではないかと思います。

 *関連記事*
『図解法人税』ほか図解シリーズ
http://taxotak.livedoor.biz/archives/50373906.html


政府税調の「答申・議事録・提出資料」の位置づけ

 政府税制調査会は、内閣府にある首相の諮問機関です。

 立法趣旨という点では、もっとも大枠を示してくれます。それが答申です。これは11月下旬から12月初旬に、自民党税調の税制改正大綱に先行して出されます。

 答申は、税制改正のグランドデザイン(長期的・総合的な構想)をあらわしてくれるため、非常に大雑把な立法趣旨ではありますが、今後どのような税制改正が行われるのかという予見的な趣旨も含まれているものもあります。特に3年に1度まとめられる中間答申は、中長期的な税制改正の方向性を示しています。

政府税制調査会
諮問・答申・報告書等
議事録・提出資料

 さて、その答申が発表されるまでには、何度も会合が開かれます。そのときに出されるのが議事録提出資料です。政府税調会長の会見録もあわせて公開されます。

 特に「議事録」は、委員による発言の中に、来年度税制改正の方向性を見て取れます。会合の翌日などは、新聞などで報道が行われます。

 なお、そのあと12月中旬に公開される与党税調の税制改正大綱では、政府税調の答申では明らかにされなかった具体的な数字や計算構造、項目が公開されます。


 *関連記事*
政府税制調査会(内閣府内)
http://taxotak.livedoor.biz/archives/50217422.html
「税制改正に関する答申」(年度答申と中期答申)
http://taxotak.livedoor.biz/archives/50500558.html


「(社)日本租税研究協会の会合」の位置づけ

 日本租税研究協会は、財政・税制問題に関する民間団体です。

 特筆すべきは定期的に行われる会合の中に、立法担当者の説明を聞く機会があるということです。特に、11月の会合では来年度税制改正のヒントを、1月の会合では大綱公開後の制度の内容を、4月の会合では施行後の制度の詳細な内容を、会員向けに講演します。

 そういう意味では、日本で一番最初に税制改正の「詳細」を知ることができる機会であるといえますし、そこでは当然、立法趣旨が語られます。


 *関連記事*
(社)日本租税研究協会
http://taxotak.livedoor.biz/archives/50383255.html


税務雑誌や解説書の位置づけ

 ここまでご紹介してきたものは、立法担当者又は立法担当者に近い人たちが書いたものばかりです。

 立法趣旨を何かで読もうと思ったときは、だれが書いたものであるかが、非常に重要であることがわかります。

 さて、税務雑誌や解説書でも、立法趣旨が語られるときがありますが、すでに公表された資料をうまくまとめただけのものもあれば、立法担当者があえて言わなかった部分を鋭く指摘しているものもあります。

 どれがいいのか、というのは非常に難しいところですが、30冊くらい読んでいると、大体、「この人は信用できる」というのがわかってくることと思いますので、最初のうちは失敗しても気にせずに、多くの本にあたってみてください。

 『改正税法のすべて』などと比較しながら読むと、記事や本を書いている著者のレベルがわかるかもしれません。


双葉更新履歴
 [2007/11/26 初投稿]



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1. 誤りやすい役員給与の税務  [ 本・コミック 取寄せ ]   2008年05月16日 17:56
誤りやすい役員給与の税務事例検討 著者:小池敏範出版社:税務研究会サイズ:単行本ページ数:268p発行

この記事へのコメント

2. IKE    2007年11月28日 00:11
今は本だけじゃなくて、ブログでもこれおかしいんちゃうの、って言い合える環境があるのが面白いですね(解釈の中身はともかく)。

税法も、なんでもかんでも疑問に答えてくれる本やブログがあるといいのですが、今のところ自分の仕事と関係ある分野ではいるようでいません・・・。
間違っていてもいいので、助けてほしい今日この頃です。
1. DOOR5296    2007年11月27日 09:06
会社法の立法担当者○○氏に対して
解釈がおかしいと、批判される先生(教授)も
多く?いらっしゃいます。

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