2007年10月15日
インナー(幹部会・顧問会議)
税制改正を実質的にコントロールしているのは誰ですか?
インナーです。
インナーとは
さて、自民党税制調査会の幹部である会長(1名)・顧問(2名)・小委員長(1名)が構成員となる組織が、実質的な意思決定機関となるインナーです(なお、この4名以外の者が入ることもありえます)。非公式の集まりで、顧問会議、幹部会と呼ばれることもあります。
自民党税調は1959(昭和34)年頃から登場しています。それまでは政府税調の案がそのまま法制化されていましたが、自民党税調を通すようになりました。
さらに税制を牛耳るようになったのが、1979(昭和54)年頃、当時の自民党税制調査会長(税制のドン)を含め、旧大蔵省(現財務省:国税担当)や旧自治省(現総務省:地方税)のOBたちが、非公式幹部会、インナーとして、全体の最終調整を行うようになってからです。その後、20年余り続くこととなりました。
そのため、自民党税調と政府税調の力関係を、東高西低(とうこうせいてい)を文字って、党高政低と言われるほどでした。なお、インナーに対して、官僚と打ち合わせをしながら改正の文言(「自民党税制改正大綱」)を書くライターという役割もあります。
当時のインナーは、官僚として税制改正を法制面から実行していた経験がある者ばかりなので、論破するのは容易ではなく、また議員としても当選回数が多いため、若手議員が税制改正に切り込む余地はほとんどなかったそうです。内閣総理大臣でさえ、重要政策を実現するために頭を下げに行くほどだったといいます。
まさに税制改正は、限られた人たちの中で決まっていた聖域であったことがわかります。
1955年以降の日本の税制史を見ていくと、税法の構造を変えるような抜本的改革はほとんどなく、景気誘導のための租税特別措置法の乱立が目立ちます。高度経済成長期と重なっていることから、それでも十分だったからでしょうが、自民党税調の仕事は悪く言えば、予算と補助金のように、「どこにばら撒くか(=減税するか)」「どこをしめあげるか(=増税するか)」となっていました。
■高度経済成長期〜バブル景気[昭和36年〜平成元年]
http://taxotak.livedoor.biz/archives/50464008.html
この時代(1961〜1989)が区分されずに固まってしまったのは、このような事情があるもあるように思います。
バブル崩壊が変えたもの
しかし、バブル崩壊により、高度経済成長期は本当の意味での終焉(おわり)を迎えてしまいました。それまでは租税特別措置法を中心に、税制改正をやっていれば、企業はどんどん国内外で儲かって税収を伸ばしていましたが、マイナス成長となり、国や地方の借金もどんどんふくらんできて、税制の抜本改革が求められるようになりました。
つまり、寄せられた要望を取捨選択して、優先順位をつけ、利害関係を調整するという作業では、すまない時代になっているのです。
経済財政諮問会議が聖域だった税制改正の分野に足を踏み入れ、首相のトップダウンで税源移譲(三位一体の改革の1つ)を行ったのも、そのあらわれといえます(ただし、その効果は個人的に疑問視していますが…)。
また同時期に、税制のドンをはじめるとするインナーの構成員は、2003(平成15)年の衆議院選挙の際に落選や引退をし、構成員全員が政治の世界から離れたため、事実上、インナーによる税制改正の聖域構造は崩れました。
衆議院選挙の惨敗を受け、インナーの廃止を正式に決めました。
インナーは(い)なくなったのですか?
形を変えて、今でもインナーは存続しています。
新しいインナーの場合
自民党税調の発言力は、税制のドンらインナーと比べると、弱体化してしまいましたが、そうはいっても、税制改正は、毎年期限までに落としどころを決めなければなりません。
やはり税制に詳しいメンバーを自民党税調の会長・顧問・小委員長に集めて、落としどころが難しい議題について、舵取りを行っています。つまり事実上、インナーは復活しています。
小泉政権や安倍政権では、官邸主導の税制改革を行うために、このインナーの解体を行おうと、税制族を内閣に引き入れたり、別の党の重要職に就けるなど、人材の分散をはかりました。
そして、その後主要メンバーの一人が2007年の参議院議員選挙で敗れるハプニングもあったものの、現在のメンバーを見ると、またかつてのインナー時代に回帰しているのかもしれません(分散していた人材がまた戻ってきています)。
現行のインナー(非公式幹部会)みなさん、東大法学部OBですね。
□津島 雄二(会長)・・・・大蔵省OB
□与謝野 馨(小委員長)・・元自民党税調会長
□野田 毅(顧問)・・・・・大蔵省OB、元自治相(現総務相)
□柳澤 伯夫(顧問)・・・・大蔵省OB、元自民党税調会長
こんな決まり方でいいの
ところで、たとえばインナーを、「税制改正の独占」と批判するのか、「意見集約の手段」と評価するのかは、それぞれだと思いますが、現在もメンバーを変えながらインナーが存在するのは、それだけ税制改正の議論は利害関係が複雑で、意見がまとまらないためでしょう。
毎年、日本中から山のように陳情(要望というより…)の紙の束が届けられる税制改正を締め切りまでにきちんと決着させるための解決策として、1つの完成した装置ということもできます。
02/10/18 塩川財務大臣(当時)の記者会見[引用元]
うん、僕はまあ、何というか、税制改正なんというのはですね、僕も長い経験をしてきましたけど、四方八方固めていかないかん。そのときにね、税制改正なんて一番大事なのは、誰が機関車になってやっていくかということが大事なんですよ。でないと、烏合の衆でまとまらないことが多いんだ。まあ、それはそれなりで財務省がやっているわけなんですが、今日、党のインナーがやります。ここで大体ですね、大体主要なことは決まってくるんじゃないかと。あと肉付けはこれからやるということになってくると思うんですが。
ただし、だから良いとは、誰も言っていないことに、ご注意ください。
*関連記事*
■自民党税制調査会(与党税制調査会)
■総会・小委員会・正副会長会議(自民党税調)
■インナー(幹部会・顧問会議)
■自民党税制改正大綱(自民党税制改正大綱)
■マル政、マルバツ審議(自民党税制改正大綱)
*参考*
税制改正は誰がやる
日曜日の用語解説:2つの「税調」
[2007/10/15 初投稿]


