2007年09月28日

実践編:問題点を見つける(その2)

Q. 税法上、退職給与引当金は廃止されていませんでしたか?

A. 平成14年度改正で廃止されていますが、経過措置があります。


退職給与引当金?もうないですよね

 法人税法の目次を見ても、本則に引当金(貸倒引当金と返品調整引当金)の規定はあっても、退職給与引当金の規定を見つけることはできません。

 これは連結納税制度の減収分を補うために、平成14年度改正で、退職給与引当金制度(旧法人税法54条)が廃止されてしまったからです。今までは無税で繰り入れていた部分(つまり繰入限度額の範囲内)についても、税法上、繰り入れて、損金計上することができなくなってしまいました。

 繰入ができなくなったときに問題になるのは、今後繰入ができなくなることよりもむしろ、「今までがんばって繰り入れてきた、税法上の退職給与引当金はどうなるのか」ということです。


Q. 残った税法上の退職給与引当金はどうしよう…

A. 附則は見ましたか?

経過措置は附則の得意技

 もしかすると、どこかに注意書きがあるかもしれません。それに気づかないで勝手な処理をしてしまうと、あとで真っ青です。

 こういうときは、紙の法規集よりも、ネット上の「法令データ提供システム」から法人税法を引っぱり出して、「Ctrl+F」を押して、検索画面を出して、「退職給与引当金」などの用語で、検索してみます。

法人税法(昭和四十年三月三十一日法律第三十四号)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S40/S40HO034.html

 
 すると、普段あまり気にしない附則の中に、実は「退職給与引当金に関する経過措置」がいくつかあることに気づきます。

 そして1つ1つ見ていくと、ちょうど退職給与引当金制度が廃止された平成14年に、残った税法上の退職給与引当金の取扱いに関する経過措置が見つかります(ここでは重要ではないため、法令は引用しません)。

※今回は既に答えが出ているので、簡単に見つかりますが、実際には、税制改正で毎年フォローしない限り、なかなか気づかないものです。そういうときは、とりあえずYahoo!JAPANやGoogleの検索エンジンに「税法上の退職給与引当金・適格合併・引継ぎ」などを入力して、情報を検索することで、漏れをなくすという工程も必要だと思われます(問題点と関係条文は、同時に見つかることが多いです)。


 平成14年7月の改正法附則を見てみると、それまでもっていた税法上の退職給与引当金(無税退職給与引当金)は、資本金額が1億円を超える法人は4年間で、資本金額1億円以下の法人は10年間で取り崩して、益金に算入することになっています(別表十一(三)「退職給与引当金の益金算入に関する明細書」を添付します)。


Q. 取崩し中に「合併」したら、どうなるのですか?

A. 附則を詳しく見ましたか?

経過措置は附則の得意技(その2)

 適格合併だからといって、他の資産や負債と一緒にまるっと引き継いで、本当に良いのでしょうか。やはり同じ平成14年7月の改正法附則を見てみると、税法上の退職給与引当金の引継ぎに関する経過措置を見つけることができます。


 とりあえず、こういう条文に出会ったら、マーカーをもって、色分けです。

法人税法/改正法附則(平成一四年七月三日法律第七九号)
 第8条(退職給与引当金に関する経過措置)
1〜4 略
5 退職給与引当金勘定の金額を有する法人が、改正事業年度以後の各事業年度又は各連結事業年度において組織再編成合併、分割、現物出資又は事後設立をいい、施行日以後に行ったものに限る。以下この条において同じ。を行ったことに伴い、その使用人が当該組織再編成に係る合併法人等合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被事後設立法人をいう。以下この項及び次項において同じ。の業務に従事することとなった場合において、当該法人が当該従事することとなった使用人に退職給与を支給していないことその他の政令で定める要件に該当するときは、次の各号に掲げる組織再編成の区分に応じ、当該各号に定める退職給与引当金勘定の金額は、当該合併法人等に引き継ぐものとする
一〜三 略

 特に適格・非適格に関係なく、一定の要件を満たした組織再編成を行っていれば、合併法人等に引き継げそうです。


 部分的に、政令に詳しく書いてあるようなので、同時に法人税法施行令も退職給与引当金の規定を検索してみます。

法人税法施行令/改正法令附則(平成一四年八月一日政令第二七一号)
 第5条(退職給与引当金に関する経過措置)
1〜10 略
11 改正法附則第八条第五項に規定する政令で定める要件は、次に掲げる要件とする。
一〜五 略
12・13 略

 簡単に言えば、退職給与引当金制度が廃止されたあとであっても、「一定の要件を満たす組織再編成をしたときは、税法上の退職給与引当金(無税退職給与引当金)を引き継ぐことができるというものです。


(その3)適用条文を探す
Q. では、問題は解決しましたね。

A. ところが、平成18年にその法令附則が改正されていたのです。


 問題点を見つける→適用条文を探す→具体的に適用する→問題点を見つける→適用条文を探す→具体的に適用する→・・・となるため、今回のように、ある規定を見ては考え、別の規定を見ては考え・・・を繰り返すこととなります(今回もこの2つが重複していますよね)。

解釈の5段階
 (その1) 事実を確認する
 (その2) 問題点を見つける
 (その3) 適用条文を探す
 (その4) 具体的に適用する
 (その5) 立法趣旨を知る


 なお、その1からその5というのは便宜的な並べ方であり、その順番どおりにしなければならないということではありませんし、工程が1回で終わりとも限りません。

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 また、関連法令は更新日の日付の時点のものを掲載しています。


双葉更新履歴
 [2007/09/28 初投稿]



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この記事へのコメント

8. IKE    2007年10月03日 01:38
なんですとぉ・・・
7. 卯月    2007年10月02日 20:17
はーい

……と言いつつ、先程は新たにかやさんと
徳留さんのところにご挨拶してきちゃいました
(事後報告)
6. IKE    2007年10月02日 01:29
そうですか…。ほどほどに
5. 卯月    2007年10月02日 00:54
何かきっかけがあれば、ちょくちょく外に旅立ちますよ
外はある意味、治外法権ですしね(なーんて?)

気付いたらある方の記事のコメント32件中、5件は私でした。
カウントしてみたら思ったより少ないですが、
私の場合、文章が長いのでいっぱいコメントしてるように
見えるみたいですね

ライブドアのブログはコメント欄の投稿可能文字数が少ないので、
時々文字数オーバーで消えてしまうのが痛いです

そんなこんなで、今後もご縁があったら、いろんなところに旅立つ予定です
4. IKE    2007年09月30日 22:48
卯月さんへ、
最近、出張しますね・・・。
3. IKE    2007年09月30日 22:47
DOOR5296さんへ
カルボナーラの作り方と同じように、奥が深いようですね・・・って、ありがとうございます、お付き合いくださって
2. 卯月    2007年09月30日 21:21
カルボナーラ、いいですよね
私の好物の1つです
1. どや    2007年09月30日 12:23
附則までちゃんと見なさい!!
と促しているあたりが
IKEさんの心配りなんでしょうかね。


ああ・・・

何か、カルボナーラ、食べたい
( 一一)

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