2007年10月03日

実践編:立法趣旨を知る(その5)

Q. でもなんで、あとから改正で追加したんでしょうね。

A. 立法趣旨を見てみましょう。


意味のない改正はしない

 本の行間に、「作者の意図」が隠されているように、法律の行間には、立法者の「立法趣旨」が隠されています。

 なぜその規定を設けたのか、なぜその条文が追加・修正・削除されたのか、もっといえば、なぜその語が選ばれたのか、なぜ・・・。

 作るからには、「何らかの意図」が、常に隠されています。


 本来であれば、解釈の途中、しかも初期段階で立法趣旨を確認すべきですが、今回は記事の構成上、あえてそれを行わないで、最後にもってきています。


平成18年とはどういう年か

 立法趣旨といえば、『改正税法のすべて』です。とりあえず、関連する箇所を見てみましょう。

『平成18年度改正税法のすべて』p.380右
 組織再編成に係る合併法人等改正事業年度終了の時における資本の金額が1億円超の法人である場合には、退職給与引当金を引き継げないこととされました(平成14年改正法令等附則5(11)四)。

(中略)

 平成18年4月1日以後に行われる組織再編成について適用することとされています(改正法令附則38)。

 これだけを読めば、今回の問題の答えはわかりますが、あくまでも、分散した法令の整理にすぎません。

 これは、立法趣旨ではありませんよね。本当に知りたいのは、「なぜこの規定を追加したのか」ということです。

 
わからなければ、推測してみる

 なぜこのような規定になったのか・・・それは、そもそも「税法上の退職給与引当金の取崩し」について戻らなければわからないような気がします。

 平成14年7月の改正で、平成15年3月31日以後に終了する事業年度(=改正事業年度)に退職給与引当金を取り崩すことになりました。このとき、資本金額1億円超の大法人は4年、資本金額1億円以下の中小法人は10年にわたって、取り崩すことになります。

 事業年度に変化がなければ、この終了する日を含む事業年度から退職給与引当金を取り崩すことになります。

 たとえば、3月決算法人は、平成15年3月31日に事業年度が終了しますので、この事業年度(平成14年4月1日〜平成15年3月31日)が改正事業年度になります。そして3月決算(平成15年3月期)で一定の取崩しを行い、益金に算入します。

3月決算法人
 → 平成15年 3月31日終了 → 平成15年 3月期取崩し
4月決算法人 → 平成15年 4月30日終了
 → 平成15年 4月期取崩し
 :
2月決算法人 → 平成16年 2月29日終了
 → 平成16年 2月期取崩し

 特に資本金額1億円超の大法人は、4年間で取り崩すため、その後事業年度に変化がなければ・・・。

3月決算法人
  → 平成18年 3月31日終了 → 平成18年 3月期取崩し
4月決算法人
  → 平成18年 4月30日終了 → 平成18年 4月期取崩し
 :
2月決算法人
  → 平成19年 2月29日終了 → 平成19年 2月期取崩し

 このように、資本金額1億円超の大法人の場合は、最速で3月決算法人が平成18年3月31日(平成18年3月期)に最後の取り崩しを行います。もっとも遅い2月決算法人でも、平成19年2月29日(平成19年2月期)に最後の取崩しを行います。

 ただし、資本金額1億円以下の中小法人は、10年で取り崩すため、この後も取崩しは続きます。
 

大法人と中小法人は違うんだね

 ここでもし、平成18年の法令附則の改正がなかったらどうなっていたのかを、考えてみましょう。今回のように税法上の退職給与引当金をもっている中小法人が、大法人に「吸収合併」されると、税法上の退職給与引当金が大法人に引き継がれることになります。

 すると、その税法上の退職給与引当金は、大法人に引き継がれてしまいますが、合併にせよ、その他の分割等にせよ、大法人の方は、4年が経過してしまえば、規定上、取崩しを行うことができません

 そのため、平成18年度改正で、四号の要件が追加されたと思われます。


あえて、適格合併といってきました

 さて、今まであえて「適格合併」といってきました。国税庁の質疑応答事例を見てみても、適格合併を前提条件にして、こうなりますよ、といっていますが、それ以外の場合については、実は何もいっていません。

 なぜなら、適格合併は、被合併法人が合併後に消滅するのに対して、その他の適格分割等(適格分割型分割、適格分社型分割、適格現物出資、適格事後設立)は、分割等を行った後も、分割法人等は存続するという違いがあったからです。

 引き継げなかった税法上の退職給与引当金は、消滅する被合併法人(中小法人)では、残額を取り崩すしかありませんが、存続する分割法人等(中小法人)では、引き続き、1/10ずつ取り崩していくことになります。

 この関係をまとめると、次のようになります。

■適格組織再編成(合併法人等の資本金額が1億円超)
被合併法人
分割法人等
合併法人
分割承継法人等
適格合併残額を取崩し
適格分割等引続き取崩し


 ついでに、合併法人等の資本金額が1億円以下の場合も、整理しておきましょう。

■適格組織再編成(合併法人等の資本金額が1億円以下)
被合併法人
分割法人等
合併法人
分割承継法人等
適格合併引継ぎ引継ぎ
含めて取崩し
適格分割等部分的に引継ぎ
残額は引続き取崩し
部分的に引継ぎ
含めて取崩し


 このように、金額が大きくなる可能性があり、しかも益金算入する税法上の退職給与引当金について、その組織再編成の形態によって、上記のような取扱いの違いあるということは、あまり大々的にいわれてきませんでしたが、よくよく見てみると、「だれか最初から表にして整理しといてくれよ」と思う条文構成です。


解釈の5段階(実践編)
 (その1) 事実を確認する
 (その2) 問題点を見つける
 (その3) 適用条文を探す
 (その4) 具体的に適用する
 (その5) 立法趣旨を知る


 さて、「実践編」はここまでです。しかし、まだ「応用編」が続きます。

Q. あれ?もしかして非適格の場合もあるんですか?

A. あります。もう1つ検討が必要です。

 そして、応用編に続きます。

解釈の5段階(応用編)
 (その1) 適格があれば非適格もある
 (その2) 主語に気をつけろ
 (その3) 強制的か選択制か
 (その4) 申告書を出す前に
 (その5) パターン化してみると


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双葉更新履歴
 [2007/10/03 初投稿]



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