2007年06月02日

法律を読むための4つの原理

法律と法律の人間関係

 法律は1つだけで存在していません。「他の法律との関係」の中で存在しています。法律同士が、内容的に何の関係もなければよいのですが、実際には微妙に内容がかぶったりすることもあります。そのときに、ある法律は「白」だといっているのに、別の法律は「黒」だよと言っているとき、じゃあ、このときはどっちを使えばいいのよ、というケースも出てきます。そんなときに、次の4つの原理が登場するわけです。

 (1)所管事項の原理(法令ごとに受持ち分野が決まっている)
 (2)形式的効力の原理(上位の法令が優先する)
 (3)後法優越の原理(後法は前法に優先する)
 (4)特別法優先の原理(特別法は一般法に優先する)


なんのこっちゃ

 とはいえ、なかなかこういうものは覚えにくいのですよね。特有の言葉を使うし、漢字ばっかりだし。というわけでこれらを「イメージしやすいもの(?)」に置き換えてみると、次のようになります。

 (1)「番犬犬」の原理(なわばりが決まってます)
 (2)「サラリーマンめがね」の原理(上司には逆らえません)
 (3)「コンビニFlash」の原理(同じ棚なのに常に新商品が…)
 (4)「ジョーカーJ」の原理(ジョーカーは強力なカード)



「番犬犬」の原理

 番犬が、家の前を通る人にいきなり吠(ほ)えることがあります。もう、心臓が飛び出るかと思います。しかし少し離れると、興味を失ったのか、番犬の吠える声は聞こえなくなります。どうやらなわばり意識があるようです。そして法律にもなわばりがあって、Aという法律は法人税について定めるものであれば、それをBという違う法律で決めることはありません。日本の行政機関が「縦割り」でなわばり意識が強いということも原因にありそうですが…。法律も同じように自分のなわばり以外のことには立ち入って決めたりしないということですね。
 「所管(しょかん)」という言葉には、行政事務をどこが管理しているかといった意味があります。


法令ごとに受け持ち分野が決まっている原理を「所管事項の原理」と呼びます。



「サラリーマンめがね」の原理

 「サラリーマンの悲哀(ひあい)」といってもいいかもしれませんが、社内では肩書きが上の人には逆らえません。社長>専務>常務>部長>次長>課長>係長>主任>平社員という序列(職制上の地位)の中で生きています。課長と平社員がいたら課長の命令が優先します。

 同じように法律も、憲法をボスにして、たとえば法人税法なら「憲法 > (条約) > 法人税法 > 法人税法施行令 > 法人税法施行規則」といった序列があります。万一、法人税法と法人税法施行規則に矛盾が生じれば、法人税法が優先します。


上位の法令が下位の法令に優先するこの原理を「形式的効力の原理」と呼んでいます。


 この形式的効力の原理については、さらに詳しい内容を、次の記事で取り上げています。

法令の上下関係も厳しい
http://taxotak.livedoor.biz/archives/50164133.html


「コンビニFlash」の原理

 コンビニの棚にある商品の寿命は非常に短く、常に新商品が入れ替わり立ち代わり陳列されます。顧客が飽きる前に次の新商品Flashを出すのが定価で販売し続けるコンビニの戦略ですので、新しい商品が古い商品を押しのけて並んでいきます。

 法律も、同じ法律であれば、新しいものが優先して適用されますので、新しく法律が作られたり、改正されたりするとその「後に出た法律」が前からあった法律よりも優先されます。法律を作るときには、常にすべての法律に関連するものがないか見ないといけないということですね。


後法が前法に優先する原理を「後法優越の原理」と呼んでいます。



「ジョーカーJ」の原理

 トランプでは、4種類の1〜13までの数字のほかに、ジョーカーJというカードがあり、これにより、ゲームの幅が広がります。特にジョーカーはゲームの中ではどのカードよりも優先される強い「切り札」としての地位を持っていることが多いものです。

 特別法というのは、特定の事柄や人などに限定されて適用される法律のことです。たとえば会社の法律関係については、民法よりも会社法が優先して適用され、もし会社法で決めていない場合は、民法の規定が適用されます。また、租税特別措置法も法人税法や所得税法などに優先して適用される法律です。

 よく法人税法22条2項や3項の別段の定めとして租税特別措置法の規定を説明しているものを見かけることがありますが、別段の定めではありません。優先されるのは、あくまでもこの原理が働いているからです。

特別法は一般法に優先するという原理を「特別法優先の原理」と呼んでいます。


 租税特別措置法については、次の記事でその性質をもう少し深く考えています。

租税特別措置法とは
http://taxotak.livedoor.biz/archives/50236279.html


<まとめ>
 (1)所管事項の原理(法令ごとに受持ち分野が決まっている)
 (2)形式的効力の原理(上位の法令 > 下位の法令)
 (3)後法優越の原理(後法 > 前法)
 (4)特別法優先の原理(特別法 > 一般法)


 税法を読むときに、頭の片隅に留めておくといいかもしれません。


 双葉更新履歴
  [2007/06/02 初投稿]



トラックバックURL

この記事へのコメント

8.  TAXOTAK    2007年06月06日 23:31
凧はともかく、ガードマンはカタカナになっていいかもしれませんね。でも、なわばりというと少し弱くなるのかな・・・^^;
7. 卯月    2007年06月06日 22:56
>番犬
何に言い換えれるかなぁと思ってこのところ考えてました。
動く範囲が決まっているっていう発想で行くと「凧」?
カタカナ言葉だったら番犬に近い発想だと「ガードマン」?

考えてはみましたが、ぴったり来るのはなかなか難しいですね(^_^;)
6.  TAXOTAK    2007年06月05日 00:05
「賞味期限」「消費期限」の発想はいいですね^^
措置法はそれで説明したほうがよかったのかな(あ、でも、賞味期限が切れても食べれるか・・・)。

暴力団もヤクザも物騒ですね・・・。
たしかに、シマを守ってるかぁ。
5.  DOOR5296    2007年06月04日 16:23
私も・・・
ヤクザしか思い浮かびません。

でも、まあ
置き換えると、イメージしやすいですよね。

牛乳買うときも、常に新しい日付を探すように、法律もその賞味?消費?期限を見極める

ってことですよね?
4.  TAXOTAK    2007年06月02日 21:22
暴力団・・・Σ(´д`;)
そうきましたか。

このサイトは、最終的には1つの絵になるのですが、今はパズルのピースのように断片的なので、むしろ混乱させるかも・・・^^; とはいえ、そうおっしゃっていただけますとうれしいです(^^)/

ありがとうございます。
3.  kimutax@税金まにあ    2007年06月02日 20:40
うぉぉぉぉ!これは素晴らしいですね。

ちょうど、うちの事務所のスタッフ君で、まったく税法をかじったことがないという子に、イチから色々教えているところです。

こんどTAXOTAKさんのブログをオススメしておきます〜。

「番犬」いいのないか考えたけど…カタカナは思いつかないし、私だと「暴力団」とか物騒なアイデアしか思い浮かびません(^_^;)
2.  TAXOTAK    2007年06月02日 20:09
ヨシザワさん、ありがとうございます(^^)/
その一言でどれだけ報われることか・・・ヨヨヨ

最近、税法を根本から見る機会を得て、改めてこういうこととかを考えています。自分の言葉で、というよりも自分がわかっていないと、意味がないので番犬とかコンビニとかになってしまいましたが・・・。欲を言えば、番犬もカタカナの例にしたかった。。。

いい例があったら教えてください^^
1.  ヨシザワ    2007年06月02日 17:28
ものすごくわかりやすい!

税法自体、民商法を一般法とした時
の特別法の位置づけですものね。

法体系全体を理解する
必要があるということですね。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔