2007年05月13日

なぜ第1項は「1」がないのか(条・項・号)

Q. なぜ第1項は「1」がないのですか?

A. むしろ「2」以降が便宜的なものなのです。


こんな法律はイヤです

 初めて条文を読んだときに「はっ」と気づいたのは、「第1項がない!」という衝撃の事実でした。どうして第1項がないのでしょう。


 それを検証するために、法人税法の基本中の基本となる条文を読んでみましょう。

 もしこんな感じで条文が出てきたらどうでしょうか。

 内国法人に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の課税標準は、各事業年度の所得の金額とする。内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額。前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額 。当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの。

 読みづらいですよね。読む以前に見るにたえない姿です。もしすべての法律がこんな風に表記されていたらどうでしょうか。困ります。


読みやすくするための工夫

 昔の古文の授業を思い出すような「文の連なり」では困るので、この読みにくさを解消するために、意味のまとまりを考えて、まずは大きくわけてみましょう。

法人税法21条
 内国法人に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の課税標準は、各事業年度の所得の金額とする。

法人税法22条
 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額。前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額 。当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの。

 実は、2つのちがうまとまりでできていたのですね。それぞれ、21条、22条・・・つまり条(じょう)という区分です。これが条文の基本単位です。すなわち、法律を箇条書きにしたものが、1つ1つのなのです。ちなみに、現行法令で最も多いものは、民法の1044条のようです。


法人税法21条は第2項以降がありません

 法人税法21条は、1文しかなくてすっきりしています。このように1つの条文の中に1つしか項目がない条文というのは、世の中にたくさんあります。ではそこに、わざわざ「1」と書く必要があるでしょうか?

 ありませんよね。これが「1」を書かない理由の1つです。


法人税法22条は第2項以降もありますが・・・

 さて、21条はこれでなんとなくわかりますが、第22条はまだこれだけだと見づらいですね。そこで、22条をもう少し内容ごとに区切ってみます。

法人税法22条
 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。
 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。
 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額。前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額 。当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの。

 内容ごとに「2、3、・・・」と頭に番号をつけていきます。それぞれ項(こう)と呼びます。しかし実際の条文をみると、第1項の「」という数字は省略されますので、上述のように「1」がありません。21条のように項目が1つしかないのならわかりますが、22条のように2項以降もある場合は、なんとなく「1」があってもいいような気がしますよね。


Q. 昔は改行と1字空けで「項」を判断していたのは本当ですか?

A. 本当です。項は、「条の段落」だっただからです。

項は見やすさのためについています

 かつて「項」は、単に改行だけとか、さらに行の最初の字を1字下げたりして表現していたようです。これは、項というのがあくまで条の中の1つずつのパラグラフに過ぎなかったことを意味しています。

 しかしだんだん法令が複雑化していくと、「えーっと、うーんと・・・これ、第何項?!」とわかりづらくてたまりません。そこで第2項以降については、算用数字で数字をつけるようになったそうです。第1項はすぐわかることと、先ほど見たように第1項しかない条文との整合性から、あえて書かないルールになっています(ただし、市販の六法のように編集されているものは編集者が個別につけている場合もあります)。

 そのため、第1項がないというよりも、条文を探しやすくするために、便宜的に第2項以降があると考えたほうが自然ですね。先ほどの「条」や次に紹介する「号」と違って、第一条の三、第一号の三のような項には枝番号がないのもこの辺の理由からくるそうです(参考:『法令作成の常識』林修三p.70-71)。


Q. 「号」とは何ですか?

A. 「号」は、同じ性質のものを列挙しています。

列挙が得意な「号」

 さて、まだ法人税法22条3項のまとまりがなんともわかりづらいですね。まだいくつか細かいまとまりがありそうです。これも内容によって分解してみましょう。

 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

 「号(ごう)」は、同じような性質を持つものを列挙するときによく使われます。そして、「一、二、三、・・・」と漢数字であらわされます。列挙することが前提ですので、必ず、2つ以上並びます。したがって、項のように省略されることなく、「一」から始まります。

 体言止めのときは句点「。」がつきませんが、「〜のこと。」「〜であるとき。」といった場合や、そのあとに「ただし・・・」といった但し書きがつくには、「。」がつきます。


 以上のように、現代の法律は、基本的には「条(じょう)」「項(こう)」「号(ごう)」というまとまりごとに区切って、たとえば「一当該事業年度の収益に係る売上原価・・・」という部分は「法人税法第二十二条第三項第一号」といった名前で表現されます(「号」の中もさらにわけるときは、「イ、ロ、ハ…」が使われますね)。

 例外ももちろんありますが、ほとんどこのような構造をしているので、まずは原則を覚えて、例外が出てきたら、「まあ、そういうのもあるんだろう」と思う程度にしておきましょう。

 それにしても、住所やサイトのURLに似てますよね。「○○町22丁目3番1号」といったところでしょうか。でもこうやって法律も区画整理されているので、多少は読みやすいんですよ。多少は。


Q. 「見出し」とは何ですか?

A. 「1つの条文」または「条文のまとまり」の要約です。

最後に見出しをつけましょう

 法規集などをみると、各条文の前に、(×××)といった感じで、見出しがつけられています。どんなに長い条文だとしても、最初にその意味を簡潔に表してくれる見出しがついていると、ほっとしますよね。また、似たような規定がいくつかあって、まとまりになっていると、1つ目の条文にだけ見出し(=「共通見出し」)がついていて、それ以降のものには重複を避けたり、探しやすくするためについていない場合もあります。

 最後に条文の見出しをそれぞれつけると、このとおり、普段よく見るものになります。

法人税法21条(各事業年度の所得に対する法人税の課税標準)
 内国法人に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の課税標準は、各事業年度の所得の金額とする。

法人税法22条(各事業年度の所得の金額の計算)
 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。
2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。
3内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

 このように、条文は見やすくするための工夫を決めていて、法律をつくる人たちは基本的なルール(これを立法技術と呼びます。)にしたがって、法律をつくります。読むためには、逆に言えば、「どのように法律を書く人は、書いているのか」という基本的なルールをおさえるともっと早く読めるコツではないかと思います。


 また、この条・項・号がわかったら、下記記事を参考にして蛍光ペン(マーカー)で色別をしてみるとより条文の内容がつかみやすくなりますよ。


 *関連記事*
難しい条文だから色別する
http://taxotak.livedoor.biz/archives/50154111.html
税法の条文構造(法人税法を参考に)
http://taxotak.livedoor.biz/archives/50361670.html


 双葉更新履歴
  [2007/05/13 初投稿]
  [2007/09/29 全文改正ver2.0]



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この記事へのコメント

4.  TAXOTAK    2007年05月14日 21:11
徳留さん、こんばんは^^
いつもお読みいただき光栄です。
次のサミットではぜひぜひ。
たしかに、大阪へは遠くなってしまいました^^;
3.  徳留新人    2007年05月14日 17:01
サミットではいつもお話できませんが(汗)、いつも記事の方を読ませて頂いています。

非常に勉強になります、ホント。

また、遊びに来ますね〜

あっ、次のサミットではちゃんとお話しましょうね(笑)

でも、遠いね・・・(爆)

2.  TAXOTAK    2007年05月14日 00:10
卯月さん、ありがとうございます^^
これからもじわじわといきたいところですね。
1. 卯月    2007年05月13日 23:06
早くも、カウンターが1000を超えてますね。
おめでとうございます(^o^)
これからも楽しみにしてます☆

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